近年、注目されているオウンドメディアリクルーティング。採用に携わる方は一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
現在、国内市場は人手不足が深刻化しており、人材確保は喫緊の経営課題です。そうした背景から企業は、従来型の「受け身」の採用から「攻め」の採用へ転換が迫られています。
その1つに自社でメディアを持ち、能動的に情報発信をしていくオウンドメディアリクルーティングがあります。
本記事では、オウンドメディアリクルーティングとは何かをお伝えするとともに、メリットや実施手順、成功事例をご紹介します。
オウンドメディアリクルーティングとは、自社の運営するメディア(採用サイトやブログ・SNSなど)を通じて、企業の魅力を発信し、自社の求める人材を採用する手法です。
自社の価値観や魅力、職務に関する情報を積極的に発信することで、職務に必要なスキルを持った、企業文化にマッチする人材採用に繋げるのが目的です。
また、オウンドメディアリクルーティングは、世界No.1求人検索エンジン「indeed (インディード)」の日本法人であるindeed Japan株式会社が推奨している採用手法なのです。
では、最新の採用手法であるオウンドメディアリクルーティングは従来の採用と具体的にどう違うのか説明していきます。
ここでは、従来の採用手法として、3つの採用手法を挙げます。
・特徴:採用募集を行っている企業が、業務内容やどのような人物を求めているかなどの求人情報を掲 載し、求職者からの応募を待つ媒体。
・強み:情報収集を行う転職潜在層にもアピール可能。
複数人数を採用した場合は、採用コストが抑えられる。
・弱み:費用に見合った分の成果が必ず得られるとは限らず、有料掲載した場合に希望にかなった
採用ができないリスクがある。
プランによって掲載できる文字数が制限されており、伝えられることも限られてしまう。
・特徴:転職を検討している方と採用を考えている企業の間に立って、転職成功を支援するサービス。少人数で採用活動をされている企業には、まるっとお任せできる転職エージェントの導入が有効に機能します。
・強み: 採用となってから費用が発生するため、余計なコストがかからない(採用投下せずに済む)
採用業務の工数を削減できる。
・弱み:採用コストが高額(採用した人材の年収の20%~35%が相場)
採用に関わる一連の業務を外部委託するため、手間は省けるが自社に採用ノウハウが蓄積
されず、外部に依存する状態が続く恐れがある。
エージェントの認識の相違から、企業が欲しがっている人物像ではない方を採用してしまう
ケースも稀にある。
・特徴:転職希望者を対象にした、合同の企業説明会です。求職者と直接話せることが最大の魅力であり、その場で気になる人材がいた場合に直接アプローチも可能です。
・強み:媒体では伝わりづらい魅力もダイレクトに伝えることができる
ウェブ上では出会うことができない層にアプローチできる。
・弱み:準備に時間を要するため、採用担当者の負担が大きくなる。
多くの企業が出展した場合に、求職者の目を引くような工夫をしなければ埋もれて
しまうリスクがある。
出展にあたっては出展料がかかる。(50~150万円が相場)
上記3つの採用手法の特徴を踏まえて、何が違うのか?という点です。
①伝えることができる 情報量・掲載期間
自社の保有するメディアからの情報発信であるため、求人媒体で制限されがちな文字数や画像を自由に載せることができます。
②アプローチできる ターゲットの範囲
求人媒体・転職エージェント・転職フェアに共通して言えることになりますが、求職意識の高い人材を中心とした狭い範囲の方としか出会えません。一方、オウンドメディアリクルーティングの場合、求職サイトへ登録していない求職意識の低い層にもリーチできます。
③メディアの運営主体
繰り返しになりますが、企業が保有しているメディアですので、自社のみでコントロールが可能であるため、人材募集したい時期に応じて採用活動を実施出来ます。そのため、外部コストも抑えることができ、採用ノウハウが溜まっていきます。
ところで、なぜオウンドメディアリクルーティングは注目されているのでしょうか。
オウンドメディアリクルーティングが注目されている3つの理由があります。
少子高齢化×売り手市場の影響で、優秀な人材確保が難しくなっています。
お金を稼ぐため < 自分の価値観を大切に働くワークライフバランスやリモートワーク普及に伴う価値観の多様化しており、求職者はより「自分の価値観を大切にして働くこと」を重要視するようになっています。
スマホやSNSの普及による、情報収集方法の多様化しています。転職活動においても同様で、インターネットの検索機能は誰もが日常的に使うツールであり、「働きたい」と思える企業を探すため、さまざまなキーワードで求職者は検索をおこないます。
このような中で、採用サイトを用意し、あふれる情報の海の中から求職者に自社を「見つけてもらう」「知ってもらう」ための工夫が企業には求められます。
続いては、オウンドメディアリクルーティングのメリット・デメリットを見ていきましょう。
・自社の魅力を十分にアピールできる
独自のコンテンツを準備することで、自社の魅力をより詳しく伝えられことができるとともに、他社との差別化を図ることができます。
・採用のターゲット層が広がる
求人広告の場合であれば、サイトに登録している方にしか情報が届きません。
しかし、オウンドメディアでダイレクトに求人を行えば、インターネットを利用している全ての人に情報を提供することができます。また既に保有しているSNSなどのチャネルを活用することで、オウンドメディアへ流入が見込めます。
・ミスマッチを減らせる
オウンドメディアでは文字数のみならず写真やコンテンツといった提供できる情報量が格段に増えるので、理念や社風なども細かく発信できます。その結果、求職者にとって入社前に企業のことを十分に理解でき、入社後の「思っていたような会社ではなかった」というギャップをなくすことができます。
・長期的にコンテンツを蓄積できる
求人サイトなどを利用した場合、契約期間終了すると、掲載内容が削除されてしまいます。
一方、オウンドメディアリクルーティングの場合、自社のメディアを使用しているため、一度作成したコンテンツやノウハウを長期間蓄することができ、資産となります。
・閲覧されるようになるまで採用は難しい
オウンドメディアは、即効性がありません。求人媒体であれば、掲載したらすぐ一定数の求職者に見てもらえます。一方でオウンドメディアリクルーティングの場合は、コンテンツを充実させながら、情報発信を継続的に行わなければ応募者を募ることができません。そのため、長期的に継続していくことこそ、採用成功に繋がるポイントとなります。
しかし、充実したコンテンツを用意しコンスタントに応募が来るようになれば、人材紹介や求人媒体から脱却でき、コスト削減が可能になります。
・初期費用がかかる
自社に採用サイトなどがない場合、まずはサイト立ち上げから始める必要があります。
もし、自社の採用サイトがあったとしても、サイト内のコンテンツ作りや採用したいターゲットに向けた戦略設計が必要だったり、継続していく上での修正にかかるコストなど発生します。
ただ、自社のメディアになりますので、社内の資産として残り続けることを踏まえると、長期的な視点で見るとコストパフォーマンスが高い捉えることができるのではないでしょうか。
・運営・情報発信ノウハウが必要
オウンドメディアは見られなければ、「採用」という目的を達成することが出来ません。つまり、運営の知識が必要になります。より多くの求職者に自社のページをみてもらうためには、どのようなコンテンツが必要なのか?求職者にとって最適な導線設計とは?といった点を考慮し、企画設計から運営まで行っていかなくてはなりません。そのため、とりあえずオウンドメディアを立ち上げたものの、思うように成果が出ず停止するケースも少なくないようです。
オウンドメディアリクルーティングの概要や特徴、メリット・デメリットを説明してきました。
ここからは実際のところどのくらい効果があるのか?についてindeed Japan株式会社の調査データをもとにご紹介します。
結果を見ていただくと一目瞭然ですが、オウンドメディアリクルーティングの実践企業は、定着率が高いと感じる割合が非実践企業より遥かに高く、そのうち「非常に高いと思う」と回答した企業の割合も高いです。
入社後のミスマッチを減らすことができるという機能を十分に果たしているといえます。どんなにコストをかけて、採用したとしてもすぐ離職してしまっては、採用コストの損失のみならず企業のイメージダウンにも繋がりかねませんので、入社前後のギャップを埋めるという意味でも実践する意味はあるのではないでしょうか。
オウンドメディアリクルーティング実践企業は、採用活動における効果を非実践企業の2倍以上が実感しており、採用コストに加え人的な労力の削減、且つ採用活動に効果を発揮する手法であると認識しています。
実践企業の声を聞くことで、その有効性を感じていただけたのではないでしょうか。それでは、「いざ始めよう!」となったときの手順についてご紹介します。
オウンドメディアリクルーティング以外でも言えることですが、ターゲットの選定は重要です。自社が採用したい人物像をより具体的に洗い出し、ペルソナを設定することをおすすめします。
理由としては、採用したい人物の志向、年齢、家族構成が明確になり、効果的な導線設計を構築することが可能になるからです。また、社内における共通認識をつくることができ、採用基準を均一化することにも繋がります。
求職者に知ってほしい自社の魅力や社風、大切にする価値観などを社内でブレストして、思いつく限り出してみましょう。その後に、自社の求める人物像に刺さる情報を絞ります。仕事内容は、求職者にイメージしやすいように記載しましょう。
コンテンツの内容は、自社の採用したい人物の魅力となるものや共感してもらえる内容にすると良いでしょう。ここで、忘れてはいけないポイントがあります。それは、求職者目線の情報発信を意識するという点です。
いくら制限なく自由に情報発信ができるからと言って、企業側の想いばかり載せてしまっては、求職者にとって有益な情報とは感じられないですし、途中で離脱してしまう可能性も考えられます。
採用サイトを保有していない場合であれば、イチから立ち上げる必要があります。自社で作成できるのであれば費用を最小限に抑えることができますが、難しい場合は、外部の制作会社に依頼するか簡単に採用ページを作成するツールを利用して作成してもいいかもしれません。
オウンドメディアリクルーティングは、即効性に欠けた採用手法であることを予め理解した上で、長期的な運用を行いましょう。採用サイトを立ち上げて終わりなのではなく、立ち上げてからがスタートといっても過言ではありません。定期的な更新と継続的な運営が成功の秘訣です。
また、発信した情報に対してのユーザーのリアクションがあったコンテンツは何なのかといった分析・改善も必須です。
それは、「ジョブディスクリプション」と「シェアードバリューコンテンツ」です。これらは、オウンドメディアリクルーティングを提唱するindeed株式会社が発信している考え方です。
「ジョブディスクリプション」とは、「仕事の役割」と「必要な能力」を可視化したもので、「職務記述書」を指します。例を挙げるとすれば、企業が掲載する求人の「募集要項」に掲載されている仕事内容や給与、勤務地などの要素を指します。事実、募集職種の職務をきちんと言語化できていない企業が多く、求職者にとってイメージしにくい状態で終わってしまい募集に至らないケースも少なくありません。
逆に、職務内容を明確に記載することで、求職者が仕事を探す際に、ヒットしやすくなり、マッチング精度向上に繋がるというメリットをもたらします。
「シェアードバリューコンテンツ」とは、自社の価値・魅力や文化を伝えることで、求職者の共感を喚起するコンテンツを指します。具体的には、どんな企業で、何を大切にしているのか、働く人の価値観などの情報です。その企業の風土や理念が「自分に合うかどうか」を求職者に判断してもらう材料になります。
「出会い」「選ばれる」ためにも、上記2点を意識した情報発信・運営を意識していただければと思います。
採用オウンドメディアの必要性や具体的な取り組みに関しての理解が進んだところで、オウンドメディアリクルーティングを実践しており、成功している企業の事例を見てみましょう。
ナイル株式会社は、デジタルマーケティングの技術力を起点にメディアや自動車など複数事業を展開する会社です。
同社は、『オウンドメディアリクルーティング アワード 2020』に入賞しました。
成功要因:企業都合ではなく、「求職者視点」で考えたことです。企業都合で考えた場合の例を挙げると、求職者の方が自社に入ることを前提としたカスタマージャーニーに基づいた考え方です。同社の場合、そうではなくて、応募前・選考前・内定してから入社するまでといった細かなフェーズに応じた求職者の心理状態を読み解いた情報提供を大切にしているとのことです。
コンテンツの内容:「生のナイル」をテーマとした、人・事業・組織・カルチャーのカテゴリで、社員のインタビュー記事や現場の声を多数発信。
株式会社メルカリは、国内最大級のフリマアプリ『メルカリ』を展開する会社です。
成功要因:同社は、オウンドメディアを運営する上で、「更新頻度を高く保つこと」「経営陣がコミットすること」「誰かのものではなく社員みんなのメディアという意識を作ること」の3つを大切にしています。運営部署を設けることなく全社で「merucan(メルカン)」の運営に関わることで、様々な職種の方からみた「株式会社メルカリ」の情報を発信することができるといえますね。
コンテンツの内容:新しい人事制度や社内の様子がわかるコンテンツ、会社で起きていることや部署の取組みについてこまめに発信。
オウンドメディアリクルーティングは、社外向けの採用に関わる施策と考えられがちですが、同社のように社員全員でオウンドメディアを作り上げることによって、社内コミュニケーションの活性化させることにも繋がりそうですね。
株式会社サイボウズは、「チームワークあふれる社会を創る」ために、グループウェアやクラウド基盤サービスといったソフトウェア製品を提供している会社です。
成功要因:高い離職率とブランド価値の認知不足、課題のなかで始まった「サイボウズ式」。2012年5月に「サイボウズ式」を立ち上げ、現在に至るとのことです。
同社は、indeed主催の『オウンドメディアリクルーティングアワード 2019』でグランプリを受賞しており、継続し続けたことが評価を頂けた理由であると語っております。また、「公明正大で、嘘をつかずに情報を共有する」というカルチャーの基、「良い」ことばかりではなく、良くないことや失敗したことも包み隠さず企画にすることが、「サイボウズらしさ」を体現しており、求職者に刺さりやすい内容といえますね。
コンテンツ内容:「サイボウズのことを全く知らない人にサイボウズを好きになってもらう」をコンセプトとした、チームワークの良さ、従業員エンゲージメントの高さを感じさせるコンテンツを発信。
ここまで、成功事例を見てきました。具体的な事例を見ることで、オウンドメディアリクルーティングがよりリアルに感じられたという方も多いのではないでしょうか。
成功している企業に共通している点になりますが、それは大きく次の3つであると本記事では考えます。
成功企業のオウンドメディアを見ていただくと「常にコンテンツが更新されていること」が分かるのではないでしょうか。
オウンドメディアリクルーティングは、長期的・継続的に情報発信と改善を繰り返すことで採用につながります。何より「続ける意思」が大切です。。継続していくことで、情報量が増え、より求職者に魅力に感じてもらえる機会創出に結びつくのです。
企業の魅力や他社よりも優れている点を挙げることで求職者の目に留まるかもしれません。しかし、求職者がもっとも知りたいのは、その企業で実際に自分が働くイメージができるかというリアルな情報です。飾りすぎないありのままのコンテンツの方が、求職者の共感を呼びます。
いくら自社保有のメディアだからといって自社のメッセージや思いをどれだけ発信したとしても、それが求職者のニーズに合わなければ共感を呼ぶことは難しいです。
その中でも「ジョブディスクリプション」と「シェアードバリューコンテンツ」を伝えることが非常に大切です。求職者の求める情報を発信してこそ、採用に繋がり、オウンドメディアリクルーティングの成功といえるのです。
いかがでしたでしょうか。
これからは「攻め」の採用が企業にとって必要であり、その中でも既に実践する企業が増加している「オウンドメディアリクルーティング」についてご紹介しました。
オウンドメディアを通じた採用は、アフターコロナ時代を迎える上でも欠かせない採用手段になりうるのではないでしょうか。まずは、採用するための一連の企画から運用までのフローを始めとした戦略設計、求職者心理を踏まえたサイト構築が必要です。
必要性は感じているものの「ノウハウがない」「リソース不足」といった方がいらっしゃいましたら、弊社までお気軽にご相談いただければと思います。